○はじめに
クリニック開業を考え始めた途端、身近になる言葉のひとつに『診療圏調査』があります。
その中に、『推定来院患者数』の数値の結果に目が行きがちですが、他の数値にも注目し、『ご自身がターゲットにしている患者の来院が見込めるのか?』、『年齢層が高いから、こういう医療サービスを提供できる。』といったご自身が練った『ビジョン→コンセプト』を元に、その対象エリアでの経営戦術を考察することをおすすめします。
クリニック開業を考え始めた途端、身近になる言葉のひとつに『診療圏調査』があります。
その中に、『推定来院患者数』の数値の結果に目が行きがちですが、他の数値にも注目し、『ご自身がターゲットにしている患者の来院が見込めるのか?』、『年齢層が高いから、こういう医療サービスを提供できる。』といったご自身が練った『ビジョン→コンセプト』を元に、その対象エリアでの経営戦術を考察することをおすすめします。
・概略
開業候補地を中心として500m・1km・2km圏内でご自身と同じ標榜科目の医院の数を数えます。次にその範囲の人口を総務省統計局が調べる国勢調査並びに厚労省が調べる患者調査・医療施設調査の診療科目別患者数から算出します。診療科目ごとにに人口数が分かれば、その範囲内での大体の1日の推定診療患者数が割り出せるので、その数を競合医院+自院の数で割ると言うものです。
日経メディカルの無料会員になれば、医師向けに無料で診療圏調査を提示してくれるサイトがございます。一度、候補地エリアで診断してみてください。
無料診療圏調査機能(日経メディカル開業サポート)
・なぜ、診断結果の数値と実際の来院数にギャップが生まれるのか。
診療圏調査のように、人間は円形に動いている訳ではないからです。実際、人間が移動する時、線路や河川、中央分離帯があるような広い幹線道路などで往来が遮断されたり、遠回りを余儀なくされたり、抜け道を利用したりするなどといったことがよく起こります。また、地図を見ただけではわからない傾斜や坂道がある地域では、自転車や徒歩での移動はほとんど期待できません。エリアによっては、自動車より徒歩や自転車での移動が多く、幹線道路沿いは不利になることだってあります。
つきましては、地図と人口数だけで判断するには限界があるのです。
注目する点として、2つございます。
・人口動態
推定患者数の数値も注目しますが、その結果の元の調査に注目します。
一例をあげると
①昼間人口と夜間人口
②年齢層
③お住まいが持ち家なのか、賃貸なのか
④住んでいる家の世帯人数など
①と②は注目する理由はわかりやすいかと存じますが、③と④を注目する理由として、人口の流動性があるかを判断しております。
具体例を申しますと、
・持ち家かつ世帯人数が2人以上の数値が高い場合、人口の流動性が低く、新患が取りづらく、いかにリピートの患者さんを取り囲む戦術を構築するか。
・賃貸かつ世帯人数が2人以下の数値が高い場合、人口の流動性が高いため、常に新患をとり続ける戦術を構築する工夫をとるか
があげられます。
※上記あげたものは、一部です。他にも注目するポイントがありますが、長くなるため、割愛いたします。
・競合医療機関と協業医療機関
調査対象範囲の医療機関を確認し、競合になる医療機関と協業できそうな医療機関を選別することをおすすめします。
【競合医療機関】について
ご自身がターゲットとしている患者さん及びその患者さんに提供する医療サービスが競合になるであろう医療機関の状況について、その医療機関のホームページを閲覧して、基本情報を得ることはもちろんのこと、実際現地に行き、患者さんの口コミのヒアリングを行うことを推奨いたします。
具体的な方法について、これは私自身もやっていますが、実際競合医療機関(場合によっては門前薬局)から出てくる患者さんに、『今度身内がこちらに越してくるのですが、ここの医療機関はおすすめですか?』と素朴な疑問をぶつけてみることです。
患者さんが大絶賛したり、すすめたりしてくる医療機関は間違いなく強いです。20人くらいに尋ねれば概ねの傾向がつかめ、それによって地域でのそれぞれの医療機関の人気度を推察します。
【協業医療機関】について
少子高齢化などの社会情勢を踏まえると、今後はより『診診連携・病診連携』を構築し、地域医療の向上が求められます。
例えば、対象エリアで呼吸器内科開業を検討するとします。
対象エリア内にて小児科を盛業している医療機関があった場合は、ぜん息の患者さんの対象年齢をヒアリングし、患者さんの紹介のお願いをすることです。
診療圏調査について、推定患者数の結果も大事ですが、詳細のデータからご自身が経営する医療機関の戦術を検討することをおすすめします。
戦術を検討するにには、どれだけいろいろなことを考えて、いろいろな人と話して、そしていろいろやってみて、そこで真剣に自問自答するか。これが大事です。私の経験談になりますが、勘が働く人やアイディアが出る人というのは、これを日々やってます。
2020年に起きたコロナによる緊急事態宣言、2024年にイトーヨーカドーが首都圏の一部店舗の閉店を発表するなど、今まで当たり前と思っていたことに対して、想定外のことが起きています。
こういった想定外に備えて、自問自答を習慣化することは大切です。